勤労者に保障されている権利でもそれを行使するときはちょっと感謝を表しましょう。
女性は職場では育児・介護休業法で保障されている休業や時間短縮の権利があります女性が仕事と子育てを両立するためには必要不可欠の権利で、長い間女性たちが望み、多くの人が取り組んできた結果やっと獲得できた権利です。
それだけにこうした権利を行使するときは周囲の同僚や上司に「ご迷惑をおかけします」「おかげさまで子どもをもたせていただけます」というように、感謝の言葉を忘れないようにしましょう。
いくら法律があっても女性が休むと周囲の人の仕事の負担が増えたりすることも多く、「だから女性は困るんだ」と内心舌打ちしている人も多いのです。
「育児休業は私たちの権利です」と正論を言うと、そういう人たちの気持ちを逆なでします。
同じことが雇用機会均等法にもいえます。
均等法がない時代は、男性のみの求人が当たり前だったというと「うっそー」といわれる時代です。
それでもいろいろな形で女性に対する差別は残っています。
若くて、素直で、地位が低いうちは重宝がられても、女性がしっかり責任のある仕事をするようになると反感をもつ人もいます。
差別は許されません。
差別するほうが間違っているのはいうまでもありません。
しかし個人の生き方としては自分の権利を振り回すより、皆さんのお陰でという感謝を表しながら黙って実力を蓄え、一日おかれる存在になるほうが、スムーズに運びます。
ゴールデンルール自分がしてほしくないことは人にもしないというのは品格ある生き方の基本です。
これは孔子の教えですが、キリスト教では自分のしてほしいように相手にしなさいといいます。
同じことを言っているようですが少し違います。
自分のしてほしいことを相手がしてほしいと思っているとはかぎりません。
人の好みはさまざまだからです。
でも自分が嫌だと思うことはたいてい人もしてほしくないと思っています。
殺される、傷つけられる、盗まれるのはみな嫌です。
だからこれらの行為は法律でも宗教でも、厳しく禁止されています。
暴力を振るうのは粗暴以外の何ものでもありません。
ましてや自分より弱い相手に暴力を振るうのは卑怯なことです。
嘘をつかれるのは誰でも嫌ですから、自分も嘘をついてはいけません。
相手が約束を守ってくれないといやならば、自分も約束を守らなければなりません。
人にバカにされるのは嫌ならば人をバカにしないように振舞わなければなりません。
威張られたり自慢されると不愉快ですから、自分も威張ったり自慢したりしないように気をつけます。
恩着せがましくされるのは誰でも嫌ですから、自分も自制します。
自分が一生懸命話しているのに、自分の話を聞かず仲間うちで、無駄話をしている人間は、誰でも癖に障りますから、人の話にも耳を傾けなければなりません。
品格ある人とはこうしたことをさりげなく実行できる人です。
人間としての基礎力といえるでしょう。
その基本は、自分が相手の立場でこんなことをされたら嫌だなと想像できることです「自分のことで頭がいっぱい、とても人のことなんかかまっておれない」という「自己チユー」の人は、「人がこんなことをされたらどう思うだろう」と考えることもできません。
自分のことだけで精一杯というのではなく、少しそれ以外の世界にも目を向けることができれば、相手が嫌がることはしないでおこうと思いとどまることができます。
それが品格というものだと思います。
ところが往々にして、自分が暴力を受けながら育ったから子どもにも暴力を振るってしまう、上司に威張られると部下に威張ってみせる、ということが起こります。
「育ちが惑い」といわれる人と「さすが苦労人」といわれる人の差は、自分の嫌な経験を人にさせないようにするか、自分も経験した嫌なことを人にも経験させて平気と思うかの違いこんなことをすると他の人はどんな気持ちで自分を見るだろうと他人の目を想像できれば、はしたない真似はできません(もっともそればかり意識してしまい何もできなくなる人もいますが、それは本末転倒です)。
人間としての教養で一番大切なのは、こうした普遍的な基準と自分の行動を照らし合わせて、自分で自分をコントロールする力をもつことかもしれません。
人間の満足度=達成度÷欲望と割りきれるでしょうか。
自分が欲しいと望んだものを手に入れれば満足を感じ、自分がやり遂げようと志した目標に達すれば満足するという単純な方程式です。
現実はそう単純でなく、どれほど多くのことを成し遂げ、経済的に恵まれているように見える人でも、あまり自分の境遇に満足していなかったり、逆に貧しくても社会的な地位はなくても人生を楽しみ感謝している人もいます。
満足感は客観的な基準ではなく相対的基準で計られるのです。
私は昔「雪山黄金となるもその渇を癒すに足らず」という言葉に深い感銘を受けたことがあります。
雪山(ヒマラヤの山々)の雪がみな黄金に変わったとしても、もっと欲しいという欲望は満たされることがない。
どれほど多くを手に入れようと満足することはない、という意味の教えです。
仏教は「むさぼる」(「怒る」「おろか」)ことから多くの罪が生じると教え、そうした欲望から解放されるよう勧めています。
私は若い頃、アメリカの教育が金持ちになりたい、成功したいという人間の欲望を肯定し、欲望を達成するべくチャレンジすることを奨励するのを見て、一種のさわやかさを感じました。
日本では欲望を達成するようにはげますより欲望を抑えなさいと教えるから、若者のエネルギーが不完全燃焼して大きなチャレンジができないのだと日本の社会を批判していました。
アメリカの国家にエネルギーがあふれているのは、個人の欲望を基本的に肯定しているからで、競争を悪いことだとは考えていませんでした(昨今の規制緩和、自由競争政策はこの考えにもとづいています)。
しかし今になって考えてみると、東洋の知恵のほうが人間を幸せにするように思います。
欲望を追いかけているだけではけっして幸せな人生を送れない、欲望そのものを自分でコントロールできないと幸せになれないと実感します。
所有欲、独占欲、名誉欲、権力欲と欲望には限りがありません。
そうした欲望は満たされれば満たされるほど多くを望みます。
まさに雪山黄金となるとも満足することはありません。
何十億円資産をつくっても体がポロポロになってもマネーゲームでもっともっと儲けたいと寝食を忘れている人もいます。
欲望から解放される、解脱するというのはとても難しいことで、修行をかさねてもその境地に達する人は稀です。
物欲から解放された高僧でも嫉妬心からはなかなか解放されないといいます。
それでも欲望のままに行動するのでなく、時に反省をし、自分を客観的に見ようと努力することが、人間の品格を高めます。
もっとうまくやればお金が儲かるかもしれない、もっと要領がよければ出世するかもしれない、とあがくことから一歩退いて、自分の誇りを守るため、正しいと信じることをするためには少し損をしてもいいという気構えをもちましょう。
少なくとも自分にもほかの人にもよいことをしようと心がけましょう。
上手にたちまわり、権力者にへつらって気にいられて成功した人をうらやんで嫉妬にとらわれることなく、「自分は自分」と考えれば心が乱れません。
物を買うとき一円でも安く買おう、少しでも収入を増やそう、少しでも預金を増やそうと自分の利益だけ考えていると人間が卑しくなります。
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